人間の身体というものはとても奥深く、様々なアプローチがあると思います。
様々な種類の施術家、セラピスト、インストラクターの方々と接する機会がありますが、形は違えど最終的にそのどれもが目指している場所は同じなんです。
クライアントさんの健康であり、個の充実ということ。
それを違う角度から見ていたり、異なったアプローチを取っているというだけのことなんですよね。
目的が忘れられ、手段が目的になってしまう危険性
各々のやり方で、個の充実をサポートしていくということをやっているわけですが、気をつけなければならないことがあります。
これは治療やエクササイズ、ムーブメントなどに関わっていると特にそうです。
どのやり方にせよ最大の目的は、「その方の身体が本来持つ機能を効率よく使えるように or 損なわないようするために」ということ。
その目的の為に手助けする手段として考えられたのがエクササイズであり、治療のやり方や各種アプローチであったはず。
しかしいつのまにかその本来の目的がないがしろにされ
「このような形でエクササイズを行わせること」
「このやり方で治療を行うこと」
「こうやってアプローチをすること」
このような形で焦点が当てられすぎて、それ自体が目的となってしまっている。
「こうでなければならない」という概念が生まれてしまっています。
資格の弊害
こういったものは「資格」の弊害なのかもしれません。
その「資格試験」に合格するために入れた知識が「正解」になってしまっている。
もちろん、間違っているわけではないのですが、それ「だけ」が正しく、ほかは間違っている、となるのは怖いことだと思います。
僕もいくつも資格を取りました。
基本的に自分が資格を取得するときは、自分が進みたい方向の知識を系統立てて教えてくれるものを選んでいます。
資格のために、というよりは自分が進みたい方向に行っていたら資格というものがあった、という感覚の方が強いです。
すでに更新せずに失効しているものもありますが、身体に関するものだけでも
・ATC (全米公認アスレティックトレーナー)
・CSCS (Certified Strength and Conditioning Specialist:更新せずすでに失効)
・PES (Performance Enhancement Specialist)
・Certified Rolfer™ (公認ロルファー)
・Source Point Therapist(ソースポイント)
・BodyTalk (ボディトーク)
と色々あります。(2017年現在)
資格試験って緊張しますよね。
たくさん勉強もしてきて頑張ってきたし、受かったらとっても嬉しい。
「努力が報われた!」という気がしますよね。
達成感も気持ちが良いです。
ただそれでも忘れないで欲しいのは
その資格を《取ることが目的》ではなく
その資格を《取る過程で身につけた知識や技術でクライアントの方々を手助けする》
ということが目的だったはず、ということ
形にこだわりすぎない
「良い姿勢とはこういうものです」
「このエクササイズはこうやらなければいけない」
「あなたはこうなんです」
見えているものだけにこだわりすぎていると(執着していると)、見落としてしまうことがたくさんあります。
応用を効かせることもできなくなってしまいます。
例えば背骨のS字カーブが「こうでなければならない」となっていたら、側湾症の方にはどのようにアプローチするのでしょうか。
側弯を持っていない方と同様のことができなければいけないのでしょうか。
それではきっとお互いに「やらせる・やらされる」の関係で苦しくなってくるし、労力の割に成果が得られなくなるでしょう。
何より、そのクライアントの方をサポートする、ということは到底難しいでしょう。
そうではなくて、例えば背骨本来の機能と目的を考えて、それに近づくためのアプローチを考え、提示していくというのはどうでしょうか。
安全面を考慮した上で「こうでもいいんだよ」「これもありじゃない」というスタンスを持つことは大事です。
(身体の機能を考えていれば基本的には安全なはずではありますが)
目的を見失わない
おそらく、資格を創設された方や初期の方は、このあたりのことは「当たり前に・自然に」考えていたし、大切に思っているはずです。
わざわざ口に出したり、文章にしなくてもいいほどに「当たり前」のこととして捉えていると思います。
ただ、時が流れ、規模が大きくなるにつれて、それが薄まってしまっていっていることもあるのだと。
それはもしかしたら忙しい現代社会の風潮なのかもしれません。
ただやはり
「目的は何なのか」
「それを行う意図は何なのか」は大切にしていきたいですね。
より良い状態でいたいと、わたし達の元にたどり着いたクライアントの方々のこれから先の道に光を照らし続けていくためにも。
それではまた
森部高史