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妻がガンになりまして

妻がガンになりまして:その7「標準治療の意味」

*妻に乳がんがあることがわかり、そこで体と心を繋げる専門家として仕事をしていること、そして夫としての立場から乳がんについて思うこと、知っていてほしいことを書き綴っています。

なお、ブログ本文中では「ガン」のことを「ぷるっぽん」と記述しています。「がん」という響きはあまり心地よくないので。

なぜ「ぷるっぽん」なのかはこちらをどうぞ。


妻への抗がん剤の治療がはじまり、すでに3回の投薬が終了。FECは3週間に1回、それを4クール行います。

今週末、最後のFEC投薬がはじまります。

妻の場合は、過去3回、投薬後3日は全く動けなくなります。

そしてそれから徐々に動けるようになり、倦怠感や体力低下などがありながら、さらに1週間が経過した投薬から10日後には傍目には闘病中とはわからないくらい、普通に生活をしています。

10日しんどい思いをして、10日元気にすごす、というサイクルを4回。

とはいえ、投薬前になると憂鬱な気持ちになると言います。今はこれだけ元気に動けるのに、また彩りのない世界に戻るのか、という。

そのあたりの葛藤は彼女のこちらのブログにその気持が書かれています。この気持ちを、いま、文章に出来る彼女はなんと強いのでしょう。

なぜボディーワーカーが抗がん剤という選択をしたのか

僕も妻もアメリカでアスレティックトレーナー(ATC)というスポーツ現場の最前線で働くための資格をアメリカで取得しました。そして彼女はその後にヨガを学び、動きを通じて人の心を整える仕事を。僕はロルフィング®を習得し、身体を通じて心を整える仕事をしています。

そういった仕事を、大きな枠組みで言うと「ボディーワーク」と言います。

身体と心を大切に扱い、自分が自分でいることを謳歌する。

そんなイメージです。

一つのことにとらわれず、自然体の自分でいる、ということを大切にするので、全体性を重んじる(ホリスティック)などということも言われます。

ですから、そのライフスタイルが自然派・ナチュラルという方向に行く人も少なくありません。そして時にそれは薬や西洋医学に対して懐疑的であったり否定的な立場となってしまう方もいます。

同時に僕は肉体的な観点とは別のエネルギーワークと言われるものも学びました。それを学ぶ過程ではワクチンや薬がいかに身体に悪影響を及ぼすかというような話もされました。考え方の1つとして、伝えることはかまわないと思いますが、実際はかなり強く落とし込まれます。ニュートラルでいることやエゴを取り払うことを伝えるものがこういった情報を強く落とし込むのは今となっては甚だ疑問です。

しかし、それでも僕たちは抗がん剤での治療を最優先することを選びました。

そのあたりのことはこちらも御覧ください。

薬は悪いもの?

僕も薬は必要が無いならなるべくとらないようにしています。なぜなら、それは本当に気づかなければいけない問題を隠してしまうことがあるから。

例えば、腰が痛いから痛み止めを取り続ける、というようなことです。痛みはその時は消えるかもしれないけれどそれはごまかしているだけで、本当に大切なことは、適度に動くことかもしれません、座り姿勢を気をつけることかもしれません、体重を減らすことかもしれません。

根本の原因をごまかすために薬をとることは避けています。

しかし、薬の力が必要な時もあります。問題を隠すために必要以上に薬を取り続けることは良くありません。しかし必要な時は必要なのです。

そして抗がん剤も同様に、「抗がん剤ではガンは治せない」「使うべきではない」という内容がインターネットにつながれば溢れるほどに出てきます。ひどいときには、一部の人が金儲けをするための陰謀論だ!なんていうものも目にします。

そしてこういった情報は、当該者や家族などの関係者を大きく動揺させます。

結果、「抗がん剤を使用しないで済む治療法はないか」を模索する患者やその家族が生まれます。我が家もそうでした。

ガンにも様々な種類や性格がある

先述のリンク先でも書いているのですが、ガンには様々な種類があります。そしてそれらには、人間の性格がことなるように特徴がことなり、それに対する薬や対処法というのも異なります。

しかし前述の「抗がん剤否定派」の文章はよく読んでみると、どのガンに対して(部位、種類ともに)、どういった薬が、どういった患者(性別、年齢、ライフスタイル、これからの人生設計など)に対して有効ではなかったのか、ということが書かれていません。

これはあまりにも危険で無責任ではないでしょうか。

標準治療の意味を正しく知っていますか?

標準治療と聞くとどのようなイメージをもたれるでしょうか?

「標準」というくらいだから、平均的でもっと良いものがある。そんなイメージを抱いた人も少なくないでしょう。

大切な家族の命がかかっているのだから、標準的なものではなく、もっと良いものを!という風に。

 

しかし、これが大きな誤解です。

 

標準治療とは

大規模な臨床試験に基づいて効果の証明された、その時々の最も成績のよい治療法。ーコトバンクより

つまり、現代医療において、最も勝率の高い現チャンピオンです。

 

標準という言葉が良くないですよね。もっと良いものがあるように思えてしまう。

 

もしかしたら人によっては、先端医療や最新医療というものの方が良いものだと感じている人がいるかもしれません。

確かに、最先端のことを行う医療というものは響きが良いです。でもそれは、なぜ最先端かというと、現在の時点で確立していない治療法だから最先端にいるのです。

いわば挑戦者です。

挑戦者が攻めることにより成功することもあるでしょう。でもそれがどういった時に有効か、という膨大なデータに基づいた確率ということに関しては現チャンピオンである標準医療には敵いません。

チャンピオンであっても負けることがあるように、思ったような効果が出なかったというケースもあるでしょう。しかしながらその裏には、ずっとずっと多くの人が救われているということもわすれてはいけません。

ただし、薬任せにはしないこと

我が家は抗がん剤を選択しました。それは妻の抱えているものに対しては、はっきりと有効性を示す結果がでており、専門家である医師が「むしろこれを選択しないで進行していく時間が過ぎ去るのを見ていることのほうが怖い」とはっきり伝えてくださったから。

しかし薬に任せるのではなく、妻の生活は変わりました。元々不健康な生活を送っていたわけではありませんが、今まで以上に健康的なものになりました。

がん細胞は糖質を餌にするということはわかっているので、糖質を制限する食事にし、自分の身体や心の状態を整えるためにボディーワークを中心に彼女の身体と心が楽になるものを取り入れています。

現代医療のチャンピオンである標準医療を軸に、それがより良い効果をだすように、ダメージが早く抜けるようにサポートできるものを積極的に取り入れる。

それが本来のホリスティックであり、治療なのではないでしょうか。

 

このエントリーで「標準医療」という言葉の持つ意味が一人でも多くの方に伝わったなら嬉しいです。


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それではまた

森部高史


ABOUT ME
森部高史
株式会社Pono Life代表取締役。Kukua Body主宰。アメリカ在住時でATCとしてトップレベルアスリートのケアにあたる。数少ないロルフィング®の資格を持ち、クライアントの身体と心のバランスを整え人生に寄り添い、「先生」と呼ばれる治療家やセラピストを指導する立場にもある。その人柄と結果を導くセッションと講座には全国から参加する人が後を絶たない。現在は自分の知識や経験をオンライン化していく方法を個人事業主や小規模法人経営者に伝えている