自分の道を自らの意思で進み、結果を残してきている人にだけ伝えられるものがある
淡路島に来て2日目。ご縁あって、宮大工をされている方の工房を見学することが出来ました。
淡路工舎、棟梁の藤田大さん。
剣道関係の仕事のつながりでご縁を頂いている藤田徹さん、教士7段のご子息。
今回僕たちが淡路島に行く、そのタイミングで息子さんが淡路島で宮大工をされている、ということで厚かましくも工房を見学させていただきました。
お言葉に甘えてお邪魔させていただいたにも関わらず、とても暖かく迎えてくださった藤田さん。
色々と宮大工についてお話くださっているなか、小さな子供を連れている僕たちの様子をみて、子どもたちが退屈しないようにカンナがけを見せてくださいました。
見て、この均等な薄さ。向こうが透けて見えます。
一流の技術を持ち、結果を残されている方に共通するのはその所作の美しさ。無駄がない動きの中に力強さがあります。
そんなものをいち早く嗅ぎ分けるのも子供たち。
すぐに藤田さんのそばをうろつくようになり、藤田さんも優しく「一緒にかんなやってみようか!」と声をかけてくださり、娘も挑戦。
剣道の世界を垣間見ることで、「本当に強いひとは優しい」というものをここでも見せていただきました。
そんな藤田さんのお心遣いもあり、娘はこの場に親しみを感じたのか、おが屑と戯れはじめました。
宮大工とは
宮大工とは、簡単に言えば神社や寺院の建築を手がける人。
神社や仏閣は「木組み工法」と言われる技法を用いて建てれます。
「木組み」とは建物の骨組みにおいて、ほとんど釘などをつかわずに、木に切れ込みなどをつけ、互いをはめ込みながら組み上げていく技術。
その作業は全て手作業。
木、一本とってもそれぞれ異なるから、「木を読む」ことも大切な技術。
そのため、一般的な大工さんの修行期間は2-3年と言われるところ、宮大工となると少なくとも10年は必要と言われているそうです。
伝統を引き継ぐその技法とそれを活かす技術の高さは言わずもがなではありますが、現在は高齢化もすすみ宮大工さんの数は多くはないのが現状のようです。そのため淡路工房では住み込みでお弟子さんを取り、その技術を後世に伝えていくことも行っています。
一流の人に共通すること
仕事柄、スポーツ界、芸術界、エンターテイメント界、芸能界、ビジネス界など、いわゆる各世界で「一流」と言われる方々とお付き合いをさせていただくことも多くあります。
その1流と言われる方々に共通することがあります。
それは、自分の考えを他者にわかりやすく伝えることができること。
自分の仕事にプライドを持っていること。
しかしながら、柔軟な姿勢を失っていないこと。
もちろんお仕事に関しては、大変なことをされているわけですから、非常に厳しい面もお持ちだと思います。
時間を割いてお話をしてくださっている中で印象的だったのは
「自分の技術をひけらかすようなことはしたくはないが、そういったものをきちんと見せていく、発信していくことも次の世代につなげていくためには大切なことであり、していく必要があること」
木材だけで作っているにも関わらず半世紀以上存続し続けられるものをつくることができる。
しかしそれだけではなく、その先に繋げていくことも意識されている。
「大工になれる人はたくさんいる。手仕事が上手い人も多くいる。だけど棟梁になれる人は少ない」
それは、建築というものは1人ではできるものではないからこそ、大きな視点で物事をとらえ、人と人をつなぎ、全体を把握し、伝え、実行し、完成させるまでのプロセスを指揮しなければならないから。
目の前のことだけではなく、その先のこと。
また、先のことばかりを考えて目の前のことを疎かにしないこと。
共にこの世界に入った同期の方々は、独り立ちするまえにこの世界を離れていったとのこと。
それだけ厳しい世界で真剣勝負を重ねてきたからこそ、宿る目の奥の強さと優しさ。
言葉の端々から感じる、仕事に対する情熱。
長い年月、脈々と流れてきた時間を引き継いでいるからこそ生まれる覚悟のようなものを感じました。
そして、とにかく大工という仕事が本当に好きなんだ、という仕事に対する愛情も。
家を建てるときには、この方に是非お願いをしたい、そう感じさせてくれる方です。
現在、作業をおこなっているこちらは伊弉諾神宮に納められるそうです。
淡路島に訪れた際はぜひ、伊弉諾神宮にご参拝し、完成された姿を目にしてください。
藤田さん、お忙しい中貴重なお話をありがとうございました。
もっともっと、お話を伺いたいです。
淡路工舎についてはこちら
淡路工舎さんは、社寺建築を基軸としながらも古民家再生や新築、リフォームなどもされています。
そのお仕事の記録も見させていただきましたが、「家を残す」という意味がはじめてわかりました。
いつかその日がきたら、是非お願いしたいです。
是非一度ごらんください。
それではまた
森部高史