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ひとりごと

日大アメフト悪質タックルをアメリカスポーツ現場でトレーナー(ATC)として働いていた者が思うこと

日本大学アメリカンフットボール部の危険タックルという愚行がアメリカで起きていたとしたら

 

初めてこの動画を見た時に、怒りと同時に理解ができませんでした。

スポーツに関わっていたものとして、こういった形で焦点が当たることは悲しさしかありません。

 

 

なぜ、このようなことが起こるのか。

そして、その後の周りの対応に関しても疑問が残るばかりです。

 

僕自身、アメリカでATC(Certified Athletic Trainer)という准医療資格となる国家資格の元、アスレティックトレーナーとして活動をし、選手が怪我をしないように、そして怪我をした時にはいち早く安全に競技復帰できるようにドクター、コーチその他関係者とコミュニケーションをとりながら選手をサポートする役職についていました。

仕事の一環でアメリカンフットボールも担当していました。

 

アメリカ在住時に担当した主なフットボールの経歴としては

  • NFL選手も多く排出するUniversity of Arkansas, Fayettevilleの大学院在学時は学生トレーナーとして。
  • ATCの資格を取ってからはNFLのHousuton Texansでサマーインターンとして。
  • カリフォルニア州のアリーナフットボールチームのアシスタントトレーナーとして
  • NCAA Division I に属するハワイ大学のフルタイムアシスタントトレーナーとして

 

その経験から、多くの方に

 

「あれがアメリカで起きていたらどうなっているの?」

 

という質問を受けたのでこちらに書き残しておきます。

 

[aside type=”warning”]書いていくうえで、「悪質なタックル」について言及しています。またそれを取り巻く環境にも。しかしそれはこのタックルをした選手個人に対しての意見ではなく、「悪質なタックル」という事例に対してのことですのでご了承ください。

また僕自身法律や、組織の専門家ではありません。そもそも起こり得ないことですし、起こったと「仮定して」、「アメリカというスポーツ現場に身を置いていた立場からこういったことが起こっても不思議ではない」という想定のもと書いていることをご了承ください。[/aside]

 

プレー後の悪質なタックルがアメリカで起きていたらどうなっていたか、という問いに対して

 

アメリカ在住時には多くの高校、大学、NFLのアメフトの試合を観戦、及び仕事としてカバーしていましたが、あれほどのものは見たことがありません。

 

そのうえで、もしもこのようなプレーがアメリカで起こったらどうなるか、という問いに対してですが、これに対しては、明確な答えがあります。

 

それは

アメリカではこれほどの悪質なタックルは起こり得ない

 

そう、起こり得ないのです。

 

なぜなら、そのワンプレーが経緯はどうあれ、「行われた」という事実で関係者は全てを失うから。

 

それでも仮に起こったらどうなったかと、仮定して書いてみます。

 

それでも仮に、あの悪質タックルプレーがアメリカの現場で起きた場合に考えられる一連の流れ。

 

もしも起こったとしたならば考えられることは以下のようなこと。

 

  • 相手チーム(今回のケースで言えば関学側)の選手がタックルを起こした選手にたいして瞬時に詰め寄る。ベンチからも飛び出す。
  • ATCやチームドクターが飛び出してタックルを受けた選手の安全を確保、搬送準備。
  • 相手チームの監督がブチ切れる
  • 乱闘になる
  • 自チーム(今回のケースで言えば日大側)の選手たちがタックルを起こした選手を叱責し、その場から連れ出す
  • 自チームの監督が選手に対してブチ切れて試合会場から追放し、ロッカールームに戻し二度と試合に出さない

 

両チーム入り乱れての乱闘スタート

 

ここらへんまでが大体瞬時に同時進行で起きます。

 

テレビでの解析が即座にはじまる

大学日本一を争うようなチーム同士ですから、アメリカであれば当然全米中継をしています。

 

ESPNなどのスポーツ専門局が全てのアングルから映像を検証し、いかに愚行であり許せない行為であるかを解説します。

当然ベンチでの動きも全て検証され、不自然な行為がなかったかを確認されますし、音声も分析されます。どういった指示やリアクションがベンチから出ていたか、丸裸にされます。

当然、厳しく事実を追求されます。

 

乱闘は避けられない、そしてその後

 

グラウンドで両チーム全体での乱闘は避けられないでしょう。

 

そして、それを全コーチ、スタッフが必死に引き離します。

警備を担当している警察も全員集合。緊急事態として、さらなる人員確保のため、協力要請もでるでしょう。

スタジアムの観客が飛び込んで参加しないようにするだけでも大変です。

 

自体の収束にどれほどの時間がかかるかわかりませんが、それが一旦落ち着いた後に

  • 審判がタックルをした選手を即退場処分にする
  • 相手チームが選手を全員ロッカールームに引き戻す
  • それをうけて、自チームもロッカールムに引き戻される
  • それぞれのロッカールームは響き渡る怒号・カオス
  • 自チームのタックルをした選手がその場にいたら、チーム内で他の選手からどのように叱責されるかわからず、チーム内での傷害事件に発生する可能性があるので、銃を持った警察官が複数人でロッカールーム内外に配置される。
  • ヘッドコーチ同士が審判と共に話し合い
  • 試合は当然、没収試合
  • その頃にはタックルを受けた選手はすでに病院へ搬送されている

 

訴訟のために救急車を追いかける弁護士たち

この頃、アメリカ中の腕に覚えのある弁護士、または名をあげようとする弁護士がこのタックルを受けた選手、及び家族に対してコンタクトを取ろうとします。訴訟を起こし大金を手にするために。

アメリカでは、事件や事故があった時に訴訟をおこすように進言する弁護士がいます。その人達は事件や事故があったときに救急車をおいかけていく、という様子を比喩してAmbulance Chaserといわれています。(Ambulance「救急車」、Chaser「追いかける」)。

 

ルールが守られないものはスポーツではない、傷害事件の可能性

 

この流れから傷害事件としてファイリングされる可能性も決して低くはないでしょう。

 

それは日本でも弁護士の方が傷害罪で成立する可能性を示唆しています。

 

故意を疑わせてしまう4つの点

故意か故意ではないかということに関しては、本人以外わからないというのが本当のところでしょう。

 

ただし、故意に行ったとしか見えないというのが以下の4点。

  • プレー後のタックルが、司令塔であるQBに対してであったこと(アメフトはQBが変わるとチームが変わってしまう、と言われるくらいその存在は絶対的なもの)
  • ボールを保持していない選手へのタックルはおろか、止まることができずに触れてしまっただけでも反則となるアメリカンフットボールというスポーツにおいて、ボールを手放してから数秒後に勢いを落とすどころか加速してタックルを背後から行っている
  • タックルをしにいくためにわざわざ方向を変えている
  • 倒した後に、捻りを加えている

 

 

人間のからだは構造上、直線的な力にはある程度対応できますが捻りには弱いです。

両脚をつかみ、逃げ場をつくらずにひねりながら倒すということはこれひとつとってみても悪質でしかありません。

 

前十字靭帯、後十字靭帯、外側、内側靭帯、半月板はおろか脛骨・腓骨などが関与した複雑骨折となっていても不思議はありません。

 

緊張がとけた瞬間に、ブラインドサイド(視界にはいっていない闇討ち)から全速力で普段から鍛え上げている選手からのタックルをうけたらどうなるか。

  • 脳震盪
  • 頚椎・脊椎・腰椎損傷:半身不随の可能性
  • むちうち
  • 骨折
  • 靭帯(特に膝・足部)などの損傷
  • 筋・腱などの軟部組織損傷
  • 半月板損傷

このあたりは何が起きていてもおかしくはなく、現在報道されているだけの怪我ですんだのは奇跡的です。

しかし、怪我が軽めの部類だったからといって、このタックルの罪が軽くなるわけではありません。

 

お粗末すぎた審判の対応

この報道をみて、耳を疑ったのはこの選手が退場になったのは3度めの反則を犯してから。

 

3度目!?!?!?!?

 

そもそも起こることがあり得ない反則です。

 

それを予期するのは至難の技だったとしても、それでも起きてしまったのであれば、1発退場の事例ですから3度めはおろか2度め反則ですら生まれるわけがないのです。

 

これは明らかに審判の落ち度です。

 

僕も競技はことなりますが、過去にラクロスにおいて審判活動をしていました。

大学で一部に所属するチーム同士の関東開幕戦を担当したこともあるので、競技は異なりますが今回の日大・関学のようなトップ同士の対戦も担当していました。

 

ラクロスもアメフトと同様に激しいコンタクトプレーがあります。

そのため、選手の安全を守ること・試合を円滑にすすめることが大切な役割。

審判は反則を取り締まるのではなく、反則をしないように場を統括していくと言う役割があります。

 

試合後に、審判の判断が議題にあがるようでは審判はその役割を果たしているとは言えません。

 

僕はアメフトの審判経験がないので、どのエリアをどの審判がカバーしているのかはわかりません。

しかし、プレー後のこの悪質なレイトタックルが審判の目の前で行われています。

 

この時、もし自分があの審判の位置にいたら何が出来ただろうか、と考えます。

 

  • 走ってくる選手が加速する前に進路に入り、タックルを出来ないようにする
  • 狙われているQBの選手に大声で逃げるように叫ぶ
  • 狙われているQBの選手を守るように駆け寄り、タックルから避けるように引っ張る

 

そうは言ってもフル装備の若い選手が全速力で走ってくるなか、進路に入るということが現実的かどうかはわかりません。

審判が担当しているエリア(注力して反則を見る範囲)が目の前ではない可能性もあります。

選手に審判が触れるということが許されているのかどうかもわかりません。

 

でもこれくらいしか、このQBを救うという観点からは救いどころがないと感じます。

 

ただ、このプレーの後に当該選手がプレーをし続けられる環境をつくってしまったことは審判のミスであり、大きな問題です。

そもそも没収試合になってしかるべきだとおもうのですが、そうならなかったことも含めて。

 

関係組織の動き

 

日本一に関係してくるようなレベルの大学の試合がアメリカで起こっていたら、それはアメリカの場合NCAAの管轄になります。

ですからNCAAとしても調査を行う、または調査の指示が入ります。

当然所属カンファレンスからの追求もはじまります。

 

今回報道にあるような監督からの指示があったという裏付けがとれたなら、罰則が発生します。

それはカンファレンス分配金の減額または停止や奨学金を付与できる選手数の制限・リクルートの制限(大学による自主規制含む)、罰金なども考えられるでしょう。

 

分配金の減額、リクルートの制限などはチーム力衰退に直結します。

 

アメリカンフットボールは危険性が決して低くはありません。ルールをしっかりと守っていても大怪我をする可能性があるスポーツです。

毎年のように死亡事故や障害が残るような怪我の報告もされています。

そのため、アメリカンフットボールに対して良い印象を持っていない人たちも多く存在することは事実です。

 

同時にアメリカンフットボールは大金が動くビジネスです。

そのため、世間からの逆風を吹かせないためにも厳罰に処するスタンスが原則的にどの組織にもあります。

 

このあたりのことは、専門家というわけではないので詳しいことはわかりませんが、こういったことがペナルティとして起こりうるのではないかと思います。

監督の落ち度

指示があったかなかったが焦点になっていますが、そこは大きな問題ではないのです。

 

もし、指示があったのであればそれはもちろん言語道断です。厳しく罰せられるべきですし、永久的に追放、及び刑事事件としてのファイリングも視野にはいってくるでしょう。

 

しかしそうでなく、仮に選手が熱中するあまりに周りが見えずあのような危険な反則を犯してしまったとしても、監督の非があげられます。

 

それは

 

この「反則をした選手を使い続けた」ということ。

 

審判から退場処分を受けていないから、といって出し続けていいというわけではないのです。

 

あのように、選手の命に関わるような危険なプレーをするものは、チームからは排除されて当然です。

 

アメフトのようなハイコンタクトスポーツにおいて、監督は命を預かっているのですから。

 

仮に、選手が熱中するあまりに周りが見えず故意ではなく起こってしまった悲運な事故だったとしても、この選手を試合に出し続けたということは、それはこの選手のプレーを容認したとみなされて当然です。

そこに秩序やルールはありません。

 

この選手を使い続けることに対して、コーチ達が異論を唱えなかったことにも疑問の余地が残ります

 

アメリカであればヘッドコーチ(監督)は逃げられない

 

もしこのようなことが起こった場合、現在の日大の監督のように逃げ回ることは不可能です。

関係各所が責任の所在を追求します。

 

メディアも様々な角度から検証し、いかに危険でありこういった土壌がつくられてしまったのか、こういった愚行を許してはいけないという形での番組が続きます。

おそらくそれに関連して、ハイリスクスポーツに関する情報や番組(過去に危険なタックルで命を失ったり半身不随になった例をあげるもの)も放送されるでしょう。

 

決して、犯人探しではなく「こういったことを繰り返してはならない」という点から各所が各々の責務を果たします。

どこかの日本のメディアのように日大監督の高齢の母親に対してインタビューをしにいく、ということなどはありえません。

 

アメリカの場合大学フットボールのトップレベルチームの監督は数億円の給料をもらっています。

そのため、多くの責任や社会的道義を背負っているのは当たり前のこととして、その追求も生半可なものではありません。

 

監督が指示をしたか、していないかは争点ではない

 

前述の通り、「指示をしたか、していないか」がすでに争点ではありません。

この選手を使い続けることで、こういったプレーを容認した、という事実から責任を追求されます。

 

結果、辞任(というよりはクビ)は即日決定しても当然のことですし、訴訟が監督及びコーチに対して行われるでしょう。

関係者は除名され二度とフットボールに関わることができないことになっても不思議ではありません。

 

また大学側も、こういった指導者を放任していたということから証拠集めが行われ、訴えられます。

 

現場で選手の身体に最も関わるATCとして思うこと

 

アメリカにおける「トレーナー」は完全に分業制で、選手をより強く早く鍛えるのはストレングス&コンディショニングコーチ。

そして、選手が怪我をしないように予防を行い、怪我をしてしまった時は、怪我の損傷を最小限に抑え、より早くより安全に競技復帰できるように他の医療従事者と連携を取りながら選手をサポートするATCがいます。

僕はATCとして長年、競技生活を行う選手たちをサポートしてきました。

 

選手は、より良い成績を残すために毎日必死にトレーニングをし、練習をしています。

そして大学生やプロ数年目と言えど、練習がおわればまだ年相応の幼さが残る若者たちばかりです。

 

スポーツは、通常の日常生活では考えられないような負荷を身体に強いることになります。

その強度や密度の濃さから、むしろ健康を害することもあるでしょう。

 

それでも自分の役割を果すために一生懸命です。

もちろん、態度が悪い選手もいればやる気がない選手がいたり、日によって取り組み方が変わってしまう選手もいます。

 

しかし一つだけ言えることがあるのです。

 

下手になろうとして努力をするものはいない、ということ

 

どんなに準備をしていても起こってしまう怪我や事故というものは存在します。

それはスポーツをする以上は関わる人すべてが認識していなければいけないリスクです。

 

しかし、同時に熱中症やシンスプリントなど適切なアプローチを行っていれば100%防げるものも存在します。

そういったものを無知が原因で悲しい事故に繋げてしまうことは避けなければいけません。

 

そして今回のものは、100%防げるもの。というよりも起こってはならないものでした。

 

怪我が起こってからのプロセス

怪我がおこってしまったとき、我々のような専門家が最大限のサポートをします。より早く、より安全に競技復帰し、怪我する前よりも良い状態でプレーができ、良い成績を残せるように。

それぞれの専門家が連携をとって、その選手をサポートします。

 

医療側にいる私たちATCは毎日何時間も選手と顔をあわせます。親よりも多く時間を共にする存在です。

しかも怪我が起こる前から時間を共にしているので、そのコミュニケーションの濃さはかなりのものになります。

 

怪我をした選手には不安が訪れます。

「本当に自分は復帰できるのだろうか」
「日常生活が送れるのだろうか」
「居場所はあるのだろうか」
「これからどうなってしまうのだろう」

 

そして、怒りも訪れます。

「なぜ自分が」
「あいつのせいで」
「私が何をしたっていうんだ」

 

ゴールの見えないリハビリほど、苦しいものはありません。

そしてそもそものリハビリのスタートが、自分に落ち度がないものであればなおさらです。

 

こういったケースではどういった声をかけていいのかわからないというのが正直な気持ちです。

そしてやり場のない怒りがこみ上げます。

 

その怒りしかモチベーションに換えることはできません。

しかしそれは不毛。

残るのはやるせなさしかありません。

 

被害をうけた選手がより早く、安全に戻れるように職務をまっとうするだけです。

 

リハビリが順調に進んでも選手はまた不安に襲われます。

「前のようなプレーができるのだろうか」
「また同じようなことが起こるのではないか」

 

こういったことを、多くの関係者とコミュニケーションをとりながら少しずつ、復帰への階段を一緒に登っていきます。

 

しかし、起こる必要がなかった怪我を見るたびにやるせなさに襲われます。

この選手は、こんな思いをするためにこのスポーツをプレーすることを選択したわけではないのに、と。

 

もしも自分がこのチームにトレーナーとして関与していたら

自分がこのチームにもしも、ATCとして関わっていたとしたら自分も当然調査の対象になります。

そこで、どういったことが行われていたか報告すると同時に、隠蔽に関与していたとされたならば、当然罰せられます。

 

チームに関わってはいたけれど、仮に本当に何も知らなかったとし、現行の監督が存続するのであれば、そのチームに関わることを辞めます。そのような組織では自分の仕事を全うすることができないからです。

(しかしその前に大学側からこの監督およびコーチ陣はクビになることが明らかですが)

 

今はただ、この被害をうけた関学の選手が良いサポートを受けて、またアメフト本来の楽しさを思いだし、プレーし続けられることはもちろん、日常生活においても何の支障もでないことを願うばかりです。

 

大人が逃げてどうする、日大アメリカンフットボール監督・コーチ陣よ。

僕がはじめてアメフトの試合をみたのは、日大と関学の試合でした。

正確な年齢は覚えていませんが、まだ小学生の頃だったと思います。たまたま親の知り合いが関係者だったというような理由でお付き合いで試合を見に行ったことがきっかけでした。

 

当時はルールもまったくわかっていませんでしたが、フィールドを走り回る身体の大きなお兄さんたちがとても眩しくて、かっこよかった。

 

なぜあんなに速く走れるのだろう。

なぜあんなに上手にボールを取ることができるのだろう。

なぜあんなに力強いタックルができるのだろう。

 

はじめてみるスポーツにワクワクしました。

 

今回の報道において残念で仕方がないのは、日大フットボール部監督が表に出ることなく、逃げ回っていることもそうですし、それに対してコーチ陣もだれも名乗りをあげて説明を行おうとしないことは恥ずべき行為です。

それはアメフト以前の問題で、組織の長として、なによりも一人の人間として。

 

監督、コーチ陣にもご家族はいらっしゃるでしょう。もしかしたら同じような年頃のお子さんもいらっしゃるかもしれない。

自分の子供が同じような事をされても平然と毎日を過ごせるのか。僕には無理です。とてもではないですがどちらの立場からにしても容認することはできません。

 

もしお子さんがいなかったとしても、長年指導に関わっていたら多くの卒業をした選手たちがいるはず。その子供ともいえる選手たちがこのような扱いをうけても平然と毎日を過ごせるのか。

アメフトは危険で野蛮が支配するものではない

今回の報道において「フットボール=危険・野蛮」というイメージばかりが伝わってしまっているのが残念でなりません。

 

確かに危険はあります。安全性が高いとは言えないでしょう。ハイリスクスポーツに分類されます。

アメリカでフットボールを担当していた時に、正当なタックルであっても意識を失う選手をみたり、足が曲がっては行けない方向に曲がり骨が見えているような状況に直面したこともあります。

 

しかし、安全面を守るために多くの人が日々、尽力しています。

 

また、日米問わず多くのフットボールをプレーした、プレーしてきた友人・知人がいますが、真剣に競技に関わってきたものたちは強い身体と優しい心をもった良い人たちばかりです。

 

2020年のオリンピックや日本版NCAAを創設するという流れのなかで、こういった行為を断罪する機運が高まっているところもあるでしょう。

しかし断罪されるべきは選手個人やアメリカンフットボールというスポーツ自体ではなく、「悪質なタックル」及びそれを強要もしくは容認した「組織運営」及び「組織の長」である、ということ。

 

このニュースは誰の心も明るく照らしません。

アメリカンフットボール界にとっても、大きな課題を残すことになります。

 

日大で1999年に主将をつとめられた新井さんという方が、以下のような投稿をFBにされていました。

▪日大アメフト悪質タックル問題について

本日までのメディア報道について、目を疑いたくなる母校アメフト部の対応に居ても立っても居られず。。
現時点で日本大学からの回答がどのようなものか不明な状況ではありますが、いちOBとして今回の事件(あえて事件と呼ばせていただきます)への願いを書きたいと思います。

時期尚早とお思いのOBの諸先輩、後輩のみなさんも多いと思いますが、母校の失態について危機的な今こそ、OBである我々がどんな誹謗中傷も受け入れ積極的に動かねばならないのではと感じたからです。問題は多岐に渡りますが、真摯な態度で積極的に行動し、議論しませんか。OBとして自分の発言に責任もってコメントしようと考えます。

まずは、長年の両校の戦いの歴史の中で、我々日大は尊敬の念にも似た特別な感情で関西学院大学ファイターズをリスペクトしてきました。我々の時代(1999年当時)には実力及ばずライバルとは言えない関係でしたが、篠竹監督のもと最大の敬意をもって試合に臨んでいました。そんな伝統ある両校の定期戦でこんなにも痛ましい事件が起こってしまった事にOBとして大変悲しく、怪我を負ったQBの青年とご家族、関西学院大学ファイターズご関係者とフットボールを愛する方々には大変申し訳ない気持ちで一杯です。まずはQBの青年の1日も早い回復と復帰を望むと共に日本大学フェニックスのOBの一人として心よりお詫び申し上げます。

今回の事件の問題についてはメディア、SNS等で報じられている通り、弁解の余地なく、危険プレーを犯した日大の重大なモラル違反であり、これまでの関係者が築きあげてきた日本アメリカンフットボールの歴史を冒とくするプレーであったのは言うまでもありません。

加害者の選手の責任はもちろんありますが、現監督と大学側の対応には失望しました。間違えばひとりの青年と家族の人生を壊してしまい、刑事事件に発展しかねないこの事件に対し、あまりの誠意ない対応にただただ呆れるばかりです。
私も人の親となり、親心を実感できる年齢となりましたが、(どちらの)選手の親御さんの気持ちを考えると怒りを抑えられません。

事件の経緯については今後明らかになっていくことと思いますが、監督がプレーを指示した事実はないとの大学側コメントが一部取り上げられています。

内田監督、本当にそうなんでしょうか?

複数の関係者から『監督の指示があった』旨のコメントがあったと報道機関の取材内容で聞いています。ご自身が潔白であるなら取材でも何でも受けて証明すれば良いでしょ。
篠竹監督の意思を継いだ男なら、日本大学の未来を考える理事であるなら男らしく正々堂々と釈明し、選手とフェニックスを守って
あげてください。

若造のOBが偉そうに書かせていただきますが、内田監督のこれまでの尽力は素晴らしいものでした。我々の学年は直接内田監督の指導を受けずに卒業した代ですが、我々のために色々と奔走いただいた事、今でも感謝しております。
昨年の大学日本一、我々OB一同心の底から優勝を喜びました。厳しいチーム状況の中からチームを優勝に導き、素晴らしい時間を共有させていただきました。
しかし、どこかに間違いがありました。関与しないOBにも大いに責任があったと反省しております。

篠竹幹夫は偉大すぎました。
今回の事件を受け、フェニックスが、日本大学が、選手が、そしてOBが試されています。
サムライフットボールの名の下に篠竹監督とOB達が築きあげてきたチームを、また原点に立ち返り十分反省し、現役選手の諸君が一日も早くプレーできるよう関係者で行動しましょう。
我々OBにできる事、何かあるはずです。
OBひとりひとりが考え行動しましょう。

明日の関学さんの記者会見でどんな内容が明らかになるのか、不安で仕方ありませんが今後の日大の真摯な対応を願ってやみません。

関係各位
記者会見を待たずにこのような私見を書かせていただきました事、ご了承下さい。本内容はいくらシェアしていただいても構いません。

内田監督
もし本内容をご覧になりまして事実と異なりました場合は除名でも何でも受け入れる所存です。監督批判と受け取っていただいて構いません。その程度の覚悟はできております。直接お話しできるなら是非お願いします。

現役選手のみなさん
今回の件で大いにショックを受けていると思います。経緯もさることながら世間からの目は見ての通りです。良くも悪くも注目されるチームである事を再確認していただき一から始めて下さい。OBはいつでも現役諸君の味方です。また篠竹監督の信念のひとつであった犠牲 協同 闘争の意味を今一度考えていただき、フェニックスのプライドとポリシーが何なのかを自ら考え行動してくれることを願っております。人生はこれからです。

1999年度 主将
OB 新井 洋平

−以上、上記Facebookの投稿より転載

 

昨今、スポーツ界では多くの不祥事ばかりがフォーカスされてしまっています。

しかし、スポーツに関わってきた人たちの想いを踏みにじることのないスポーツ界であることを強く望んでいます。

また、いまは現場からは離れましたが、その世界に身をおいていたものとしてもこれ以上失望を重ねることがなく、スポーツが持つ力を本当の意味で社会に伝えていく一助になれたらと思います。


追記:

日大の内田監督が辞任したという報道がありました。

解雇ではなく、辞任。

今後も日大および、フットボールに関与する余剰や影響を与える場所を残してしまっているのかどうか。

だとすると、連盟の役割とは?スポーツ庁の役割とは。

そういった所も、これからのスポーツ界において大切な観点に思います。

 

選手ファーストという言葉だけで、実際は選手以外のスタッフや代理店、政治家などの関係者ばかりが甘い汁をすするスポーツ業界にはこれ以上失望したくないから。


追記その2:

理事会があったようですが、この事柄に関する言及もなく。常務理事の内田元監督は監督の辞任は表明したものの理事に関しては現時点では言及していないようですね。

日大は危機管理学部およびスポーツ科学部を抱えているにも関わらず、どういった観点でこれらの学部を運営し、教授陣は何を感じ学生たちに教鞭を振るっているのでしょうか。

それではまた

森部高史


ABOUT ME
森部高史
株式会社Pono Life代表取締役。Kukua Body主宰。アメリカ在住時でATCとしてトップレベルアスリートのケアにあたる。数少ないロルフィング®の資格を持ち、クライアントの身体と心のバランスを整え人生に寄り添い、「先生」と呼ばれる治療家やセラピストを指導する立場にもある。その人柄と結果を導くセッションと講座には全国から参加する人が後を絶たない。現在は自分の知識や経験をオンライン化していく方法を個人事業主や小規模法人経営者に伝えている