先日母校の「職業調べ」という授業の一環で、中学生201名、教員5名の皆さんの前で「仕事」についてお話をさせていただきました。
いわゆる有名企業に勤めているわけでもなく、ボディーワークというまだまだ日本では知られていない仕事をしているなかで、こういったお話をいただけることは大変うれしいことであり、母校は勇気があるなぁ、、、と率直な感想であると同時にお声掛けをいただけたことがとっても嬉しいです。
それに一つの仕事だけをしてきているわけではない自分です。
今時の中学生が仕事に対してどのようなイメージを持っているのか、わからなくて少し頭を悩ませましたが、いつもどおり自分のそのままの姿をさらけ出していくことにしました。
自分が通ってきた道
僕自身、様々な仕事を経験してきました。
- 中高一貫校英語教師
- 大学院生
- アスレティックトレーナー
- ボディーワーカー(ロルフィング)
- エネルギーワーカー(ソースポイント・ボディートーク)
- セミナー講師(解剖学・ボディーワーク・経営)
- コンサルタント(目標設定・経営)
と言ったように様々な顔を持っています。
元々家は商売をしていたので、小さい頃から家の仕事を手伝い、店頭に立つこともありました。
仕事をしている親の姿を毎日見ていたので、仕事をするというのはどういうことなのか、生まれたときから肌で感じるものがありました。
そして自分が働き出す時に最初に選んだ職業は教師でした。これは神奈川県の私立中高一貫校で2年間英語教員としてつとめ、部活動の顧問もしていました。
その後アメリカの大学院に進学して、もう1つの目標でもあったアスレティックトレーナーを目指すことになります。
大学院の過程を修了後、ありがたいことに仕事のオファーを頂くことができ、アメリカの大学で働くことになります。アメリカで働いた5年間、トータルでインターンやフルタイムとして関わった大学や組織は7つ。
地域はアーカンソー、テキサス、コロラド、カリフォルニア、ニューヨーク、ハワイと全米に広がります。
それだけでも異例と言えると思います。
ましてや教職からその道に進み、全米の広い範囲で仕事をしてきました。同じアメリカという国とはいえ、文化や考え方が大きく違います。そのなかで一定の成果や評価を得ることが出来ていたのはなぜなのか。それは後に続きます。
日本に帰ってきてからはロルフィングというボディーワークを提供することを主な仕事としてきています。
アスレティックトレーナーとしての経験と知識、そしてロルファーとしての見識と技術を融合させたものはユニークな物の見方をしているとのことで、セミナー講師としての仕事を頂くことも増え、現在は自分のオフィスでAnatomy for Real Life (ARL)というシリーズ物の解剖学講座や「触れる」という事の本質をお伝えする講座を提供しています。
そしてその活動の中から、自分でサロンやスタジオを開いたり、独立して仕事をし始めたけれどなかなか思うようにいかなくて、ということでその方たちの相談にのるコンサルタント業や講座でお話をしていくことにも活動の幅が広がりました。
ともすれば、全くバラバラの事をしているようにも見えますが、そうではありません。
なぜなら僕の仕事は自分の強みを活かした「お客様の問題解決」だから。
ボディーワーカーとしては身体を入り口に心のバランスを取り、自分軸で人生を生きていくお手伝いを。
セミナー講師としては、その先にいるクライアントの皆さんにより良い価値を提供できるお手伝いを。
コンサルタントとしては、自分の目標をしっかり設定しクリアしていくお手伝いをしています。
だから職業は違っても仕事としては同じことをしているのです。
職業と仕事の違い
例えば自分が過去に行っていた教師という「職業」は、学校という組織に勤め教壇に立っている人のことをいいます。
でも教師の「仕事」はそれではありません。
教師の仕事は、自分たちの「経験を伝えていくことで子どもたちの未来を創造していくこと、子どもたちの可能性を開いていくこと」です。
ボディーワークという職業は、ある手技・手法を用い身体に対して何らかのアプローチをしていく中で気づきを与えることをいいます。
しかしボディーワーカーという仕事は、「目の前の人がありたい自分でいて、自分軸でイキイキとした人生を送れるように身体と心を整えていく過程で様々な気づきを与え、共有し、その人が自分の足で自分の人生を歩んでいけるお手伝いをしてくこと」です。
単なる身体オタクではボディーワーカーにはなりえません。
だから生徒の皆さんには、「『職業を選ぶのではなく、仕事を選ぶ』という気持ちを忘れないで欲しい。」と伝えました。
どうやってその違いを知るの?大切にして欲しいこと
そうは言っても、自分を振り返っても中学2年生の頃に「仕事がー」と言ってもピンとは来なかったと思います。
でもそれでもいいのです。中学2年生は14−5歳。早い人は3年後には仕事をし始めるだろうし、多くの人は7−8年後には仕事をし始めます。
その時に「なんか職業と仕事についての違いをはなしていたおじさんが中学2年の時にきたなー」という瞬間が訪れてくれたらそれでいい。
職業ではなく、仕事を見つける為の準備として大切なこと
それは、「いま自分がワクワクすることや好きなことをしっかりと見つけて、大切にして欲しい」ということ。
自分が好きだと思えること。
それは自分の強みになります。
大人になると、「ねばならない」というタスク優先思考になってしまいます。それだけ忙しいし、責任というものもついて回ります。
でも本当は大人も子供も自分の「好き」をどう大切にできるかが人生を自分軸で生きていくコツです。
なぜなら、仕事というのは単にお給料をもらうためのものではありません。
仕事というものは社会貢献だから。長く、安定した質で提供していく必要がでてくる。
それは嫌いなことでは出来ません。
好きとか嫌い、という話をすると「好きなことだけで仕事はなりたたない!」という声が聞こえてきます。
そのとおりだと思います。
仕事の中には、やりたいこと、やらなければならないこと、やる気がおきないこと、やりたくないこと、があります。
それも全部ひっくるめてトータルで見た時に「好き」だから乗り気にならないこともしっかりこなしていくというだけの「好き」が必要なのです。
それを見つけるにはしっかりと自分と向き合う必要があります。
これは大人になってからでも可能ですが、なかなか難しい。
なぜなら大人は「今ある自分」を基準に物事を考えてしまうから。
「今の生活が、、、」とか
「今の自分にそんな能力は、、、」とか。
いくつになっても人は変われます。自分が本気なら。
そして僕もそういう方たちと多く時間をともにしてきました。
でも結局変われない人もいます。
それは、変わらないという選択をした、ということ。
そこに自分で責任を持てていれば自分の道を進んでいくことが出来ます。
そう、人生は全て自分の責任だから。
勉強をする意味
14−5歳に仕事の意味といっても、ピンとこない。だから自分の好きを大切に育んで欲しい。
それと同時に、いまのこの時期は「勉強をしっかりして欲しい」ということも伝えました。
それはテストで良い点数を取るためではなく、勉強は物事の様々な面をみせてくれるから。
例として水をだしたのですが
- 英語ではwater
- 理科ではH2O
- キラキラしたなどのように形容する形を知るのが国語
- 音で表現するのが音楽
- 形に残すのが美術
- 料理に合う水があることを知るのが家庭科
- どこの水であることを知るのが地理
- 地球の何パーセントの水がどのように使われ自分たちのところに届くのかを知るのが社会
- 身体の中にどれだけの水分があるのかを知り、活用されているのかを知るが体育
学ぶことは、一つのことを様々な角度から見られるようになること。
それは多様性を認められるようになること。
そうすると自分はどの見方が好きなのか、得意なのかがわかってくるようになる。
それは強みになり、強みがわかってくるとそれを活かそうと自分を大切にして強みを活かすにはどうしたら良いか考え、行動していくようになる。
またそれは他者を尊重することにも繋がる。
それが人生に彩りを与えてくれる、自分の望む人生を豊かにしてくれるから。
そしてやっぱり「からだはこころのいれものだから」
中学生という時期は多感な時期です。
たくさん悩むことも、なんで自分が、、、ということもあると思います。
そして悩む時間はあるべきだと思います。
悩むということはそれだけ自分が真剣に何かに向き合っている証拠だから。
教師として、アスレティックトレーナーとして、ボディーワーカーとして、コンサルタントとして、様々な国の人やバックグラウンドの違いがある方たちを見てきた自分だから言えること。
それは悩んでもいい。
でも悩んでいるときだからこそ、身体を大切に扱って欲しい、ということ。
よく食べる、ちゃんと寝る、身体を動かす。
キツイときにはしっかり休む。
誰か委ねられる人の手を借りる。
頼れる人という引き出しを沢山もっておく。
心は目に見えないけれど、身体は見ることができるから。
身体と心は繋がっていると言われます。
だから目に見える部分を大切にしていってあげることで、心も大切にできるから。
中学2年生の、自分の後輩たちの素直な眼差しが壇上からとても心地よく、また頼もしくもありました。
この子達が大きくなって、今度は僕がこの中の子たちから何かを教わったり、講演を聞くなんてこともあり得るかと思うととてもワクワクします。
大人になってから、少しでもこの時の話しを思い出し「からだはこころのいれものだから」ということを大切に思える瞬間が訪れてくれたら嬉しいなと思います。
本当に素敵な取り組みをされている母校。僕が学生の頃にもあってほしかった!
同時にこれだけのことをされるのは、本当の先生方のご尽力には頭がさがります。
またなにか母校のために、また後輩たちの為に、子どもたちのために自分がなにかできたなら、と思います。
ありがとうございました!
それではまた
森部高史