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妻がガンになりまして

妻がガンになりまして:その3「夫の立場から夫の立場にある人に伝えたいこと」

*妻に乳がんがあることがわかり、そこで体と心を繋げる専門家として仕事をしていること、そして夫としての立場から乳がんについて思うこと、知っていてほしいことを書き綴っています。

なお、ブログ本文中では「ガン」のことを「ぷるっぽん」と記述しています。「がん」という響きはあまり心地よくないので。

なぜ「ぷるっぽん」なのかはこちらをどうぞ。

その2はこちらから


昨日のエントリーでは、女性の方に2つお願いをしました。

ひとつは検診やセルフチェックを行い、「気のせいかな」で済まさずにきちんと診察をしてもらうこと。そしてもうひとつは、パートナーや家族に「検査結果を聞きにいくのについてきて」とお願いをして下さい、ということ。

女性同士の家族やパートナーであれば特に大きな問題はないかと思いますが、ここではパートナー(恋人、夫)が男性だった場合について述べさせて下さい。

妻がぷるっぽんと同居していることがわかり、僕達夫婦は動揺しました。

これからどうしたらいいのか
もっと良い病院があるのではないか
もっと良い先生がいるのではないか
もっと良い治療法があるのではないか

多くの方が考えるようなことは、一通り考えました。

次のエントリーで詳しく書きますが、やはり一番引っかかったのが抗がん剤を使用することでした。

そこで、自分たちの知り合いのドクターで、自然療法的な考えにも広い理解を示す方に相談を妻がしたところ、返ってきた最初の答えは

 

「べぇさん(僕のこと:夫)にはもう伝えているの?」

もう、わかった直後に連絡をもらっていますから、当然答えは「はい」。

それに対して「良かった、、、」とのお答え。

 

話を聞いてみると、乳がんになった女性の多くが夫に伝えない事を選択しているそうです。伝えられるのはある程度進行してから、ということもあるようです。

そこにはやはり、心配をかけてはいけない、負担になってはいけない、という気持ちがあるのだと思います。

相手を思えばこそ、なのだと思います。

でも女性のみなさんに覚えておいてほしいことは、男性はいくつになってもヒーローでいたいのです。馬鹿みたいに聞こえるかもしれないですが、子供がヒーローごっこをしているのと同じようなものなのです。

だから困っているときには「助けて」って言ってほしいのです。怖いときには「怖い」って言ってほしいのです。

 

「それくらい察してよ」、と言われてもしょうがないのですが、ごめんなさい、男はにぶいから察することができないので、伝えてください。そうしたら僕達男性はもっと女性を守れます、力になれます。

 

でもね、考えてみてほしいのです。

なぜ、ドクターが「夫に伝えられない女性が多い」といったのか。

それは女性のせいではないのです。

男性のせいなんです。

 

夫側からしたら「なんでそんな大事なことを黙っていたんだ!」となるかもしれません。

でも、伝えさせてくれる雰囲気や場、時間、空間をつくっていなかったのは、夫であるあなた、なんですよ。

 

仕事が忙しい
家族のために頑張っている
疲れも溜まっている
朝も早くて夜も遅い
家でも仕事をしている
ため息が多い
仕事の付き合いでいつも遅く帰ってくる

 

そんな風になっていませんか?

奥さんは、家庭のために頑張ってくれていることを重々承知です。

だからこれ以上負担にならないようにと思うものなのです。だから言えない人が多いのではないでしょうか。

これが共働きで女性の方にも更に負担がかかっていたら、「話を切り出す」ということにエネルギーを割くことはなかなかできないものです。

 

ちゃんと早い時間に家に帰っていますか?
家族との時間を過ごせていますか?
休みは取れていますか?

 

大切なことを伝えるのは、一瞬かもしれないけれど、その大切なことを伝えようと思わせてくれる空間をつくることは、毎日少しずつのことを大切に積み重ねた先にあるものです。

 

その日何があったのか聞いてみて下さい。
些細な変化でも気づいたら声をかけて下さい。
その日あった嬉しかったことを話してみて下さい。
悔しかったこと、悲しかったことを打ち明けてみて下さい。

そういったことの積み重ねが、怖さや不安がつきまとうことを伝えるときには大切になってきます。

 

そういう僕も、妻に「去年のあなただったら、ぷるっぽんのこと伝えられなかったと思う」と言われました。

そうだろうな、と思います。

 

昨年の自分はオフィスを移転して、広くしたことで更に頑張らなければ、と思っていました。

ボディーワークやトレーナーとして活動している人がもっと、活躍できる土台をつくって、多くの人が笑顔になれるということを示したかったから。法人化も視野にいれていました。(2017年3月24日に株式会社Pono Lifeを設立しました)

だからとにかくオフィスの空き時間をつくってはいけないと思ってがむしゃらになっていました。

ふたりともフリーランスだった我が家は、妻が産休状態でしたから、自分が頑張らないといけない!そう思って毎日朝から晩まで働いていました。オフィスに泊まり込むこともありました。

その頃娘は1歳になったばかりでした。

 

頑張ってくれているのはよくわかっている。
これ以上負担をかけられるはずもない。

だから自分が子育ての悩みやつらいと感じていることを伝えられない

そう思わせてしまっていました。

それでもその時、妻は勇気を持って「とても辛い」ということを泣きながら話してくれました。

 

そうは言っても戸惑った自分もいます。
自分は亭主関白というわけではなく、(そういう面も他の家庭同様、妻から言わせればあるでしょうが、、、)掃除も洗濯も料理も寝かしつけもしていました。

これ以上どうしたらいいというのか、とは正直感じました。

自分の身体が二つあればいいのに、とも。

 

でもそこで気づいたのです、自分はそもそも何のために頑張っているのだろう、と。

家族のため、と思って頑張っていたはずなのに、その家族を苦しめてしまっていては本末転倒です。

「もう少ししたら落ち着くから」
「もう少ししたら落ち着くから」

そればかり繰り返していました。

その言葉を信じて待っていてくれたのに、決して落ち着くことがなかった、いや、落ち着かせることが怖かったのだと思います。

 

でもその一件から仕事のやり方を替えました。

朝も遅い時間からにし、夜もなるべく早くかえるようにして家で娘とお風呂に入り、家族でご飯を食べられるように調整しています。難しい時もありますが、そうして自分のペースをかえたことで、今回ぷるっぽんがあることがわかったときも、すぐに話しをしてもらえました。

自分のように個人事業主や一人社長のような形であれば、スケジュールのつけようはあるかとおもいます。勤め人だとなかなか難しいと思われることもあるでしょう。誰かを雇っているのであれば、自分が休むわけにはいかない、と思われることもあるのかもしれません。

でもね、やり方はいくらでもあるはずです。

 

「仕方ないだろ、仕事なんだから」
「俺が頑張らなければ家族はどうなるんだ?」

 

そんなことも頭をよぎるかもしれません。

 

家族のために頑張ってくれていること、夢や目標に向かって日々研鑽していること、一番側で見てくれています。

そんな最愛の人の起こっては欲しくない一大事が起こってしまったときに、話をしてもらえるように、今から少しずつ準備をしておきませんか?

その準備は無駄に終わることはありません。なぜなら、ぷるっぽんが起こらなくたって、今よりもずっともっと安心した笑顔が見られることになるはずだから。


カテゴリー:【妻がガンになりまして】こちらから全話ご覧いただけます

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それではまた

森部高史


ABOUT ME
森部高史
株式会社Pono Life代表取締役。Kukua Body主宰。アメリカ在住時でATCとしてトップレベルアスリートのケアにあたる。数少ないロルフィング®の資格を持ち、クライアントの身体と心のバランスを整え人生に寄り添い、「先生」と呼ばれる治療家やセラピストを指導する立場にもある。その人柄と結果を導くセッションと講座には全国から参加する人が後を絶たない。現在は自分の知識や経験をオンライン化していく方法を個人事業主や小規模法人経営者に伝えている