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経営脳

トレーナーあがりでボディーワーカーの僕がお金の話をする理由

「こういう仕事はお金じゃないんだから、この仕事で食っていくって言うあなたはすごく息苦しい」

 

日本に帰ってきてすぐの頃、冒頭の言葉をロルフィング®を提供しているロルファー仲間から言われた時ものすごい衝撃でした。

 

「それでは、あなたはセッション料金をとらずに無償で提供しているんですか?」

と聞くと、セッション料金はとっている、という。

 

これはものすごく矛盾しています。

これでは、正しい価値が広まるはずもないし、必要な人に届くことはありません

 

僕はアスレティックトレーナー、そしてセラピスト、ボディーワーカーとして活動する人の中では唯一と言っていいくらい、オープンにお金の話をします。

なぜなら、それはこの職業の価値を本当の意味で高めていくには、必要不可欠だからです。

 

「お金じゃない」

そう聞いた時、あなたはどう感じるでしょうか。

 

誰かの為に、自分の持てるものを提供できるって素敵なことだな、でしょうか。

それとも、、、?

 

お金が全てではありません。

仕事はお金だけではありません。

僕も子供に対するものや、理念や想いに共感出来るものに関しては無償や通常よりもずっと安い価格で引き受けることもあります。しかしそれが出来るのも、普段きちんとした対価を頂いているからです。

お金のことと向き合えないことも、それはまた仕事でもありませんし、プロでもありません。

ここからは、アメリカでトレーナーとして働いてきていた時代のことからお話をしていきますが、トレーナーでないインストラクターや治療家、セラピストの方もぜひ最後まで読んで下さい。

お金のことを意識するようになったのはアメリカ時代

僕のことをよくご存知ない方も多くいらっしゃるでしょうから、簡単に経歴をお伝えすると、アメリカのスポーツ現場でアスレティックトレーナー(ATC)として活動をしていました。その後日本に戻り、ロルフィングを提供するボディーワーカーとして、Kukuna Bodyを開設。現在は株式会社Pono Life代表取締役として「全ての人に自分軸の人生を」をミッションとして、セッションやセミナーを行っています。

より詳細な経歴についてはこちら

当時、フルタイム(正職員)で現場で働ける日本人はかなり少数でした。その点に関しては今もさほど変わりはありません

プロに多く進む大学院で学位を取り、NFL,MLBのチームでトレーニングキャンプでインターンをし、当時憧れていたプロスポーツの世界を垣間見ることができました。

その後、全米各地の大学でフルタイムとして働き、最後はハワイ大学のフルタイムスタッフとして勤務していました。

 

その途中、より自分自身の知識や技術、そして身体の部位をみるのではなく、その「人」を見ること、そしてより効率的に身体を見て、何よりもその人の人生をより楽しく、楽になるお手伝いをできるように、ロルフィング®というボディーワークを学びながら、勤務を続けていました。

ということで、かなり高いレベルで重圧もあり、ビジネスとして大きなお金が動いている現場で身を粉にして働いていました。

 

その時間は、大変なこともありましたが、とても楽しく、自分がやりたかったことを形にできていたので大きな不満はありませんでした。

いや、厳密に言うと不満はありました。しかしながらそれを自分の「熱意」「情熱」という【やりがい】という言葉にすりかえ、見ないようにしていた事に気づいたのは、アメリカでのキャリア終盤でした。

不満に蓋をしていたことに気づいたその理由

簡単に言うと、同業の人たちが幸せそうではなかったのです。そしてそれは、自分も含めて、です。

アメリカのスポーツ現場で働くということは、大きなビジネスの現場で働くことになります。日本ではあまり馴染みがないのでピンと来ない方もいらっしゃるでしょうが、アメリカで最も人気のあるアメフトの試合では、もちろん規模にもよりますが1試合で数千万円から数億円単位のお金が動きます。大学スポーツといえど、です。

そういった現場で医療スタッフであるATCとして働くということは、ほぼ24時間オンコールであり、長時間の勤務になります。

 

僕の最もひどい勤務時間のシーズンは朝4時に職場に入り、夜11時に帰るというシーズンがありました。シーズン中は遠征もあるので、毎週1週間遠征に行き、次の1週間はその生活、また遠征に飛ぶというような仕事です。

また、アメリカの大学でフルタイムスタッフとして働くには、原則修士号を持っていることが条件になっている事が多いです。そう明記はされていないですが、経験がものを言う仕事でもあるので結果的にほぼ修士号を持っている人が雇われます。

さらに外国人としてアメリカで働くとなると、大学にスポンサーになってもらって労働ビザを申請してもらわなければなりません。それには費用が数千ドルかかります。言語も母国語ではなく、さらに余計な費用がかかるなかでも、同等の資格を持つアメリカ国籍を持つ他の志願者よりも、「この人を雇いたい」と思ってもらわなければいけません。

そんな条件のなか、得られる平均的なATCの給料はいくら位だと思いますか?

平均で400万円前後です。

これは平均値なので、30年働いている人であればもう少し高くなりますし、これよりももっと安い人たちもいます。

自分が長年やりたいと思っていた仕事につけた。しかも日本人で同じような経験をできる人は本当に一握りです。その環境を与えてもらったことは感謝しかありません。だから一生懸命働きました。朝4時から夜11時までの勤務も「やりがい」が支えていました。でも僕の給料はその程度です。

これって本当にプロフェッショナルなのか、、、

どんなに、自分が専門性を磨いても「あなたの価値はこれくらいのものです」、と言われていることと一緒だと気づいたのです。

 

繰り返しになりますが、お金が全てではありません。

しかしながら、プロとして働く以上は、対価は1つの大きな基準なのです。

 

もう自分の気持ちを偽ったり、自己犠牲のもとに仕事をするのはやめませんか?

安価で仕事を引きうけ、「お金じゃない」という建前で活動をすることで、結局これらの業界は衰退していきます

「私たちの仕事の価値をもっと知ってもらわないと!」と思っていることと、全く反対の行動をしてしまっているのです。

誰にでも利用できる、ということの弊害

ちょうど、本日ファミリマートがジムを併設するというニュースが流れました。

少し前は、TSUTAYAがジム展開を始めることでも話題になりました。

 

多くの方が健康に目をむけ、自発的に身体を動かすようになり健康に近づく。自分の望む健康状態に近づける環境というのはとても喜ばしいことです。

しかし、そこで働く「トレーナー」「インストラクター」目線で考える時、もしこれで、需要が増えると思っていたらもう一度、これからの人生設計及びビジネスプランを考え直した方が良いです。

 

誰にでも利用できる業態になるということは、メリットとして認知度が上がるということはあります。そのお陰でまたさらに生まれるメリットというのもあります。

また、同時にデメリットもあります。

これにより、フィットネスは誰にでも気軽に手を出せるものになる反面、その場で働く労働者に関してはより安価な人材を求められるようになります。

収入の天井を理解していますか?

いま、フィットネスクラブを中心に働くインストラクターの方々は、経済的に苦しんでいる方が非常に多いです。

それは端的に言うと、単価が安いから。

 

自分の望むライフスタイルと、働くスケジュールや環境が自分のニーズとあっているのであれば良いのですが、そのスタイルではどうしたって、枠数x単価x頻度で自分の収入の天井が決まります。

その単純な計算をせずに、入ってくる金額と自分が行っているライフスタイルとのギャップに苦しむのであれば、それは身を置く環境と働き方を考えるしかありません。

砂漠で潤沢な水は飲めないのです。

 

こういった、大手、しかもフィットネス産業を母体としているわけではない企業がフィットネス業界に入ってくるということは、安価な働き手を求めます。

となると、現在インストラクターの方々が直面している経済的な問題にさらに、拍車がかかります。

 

数ヶ月で体重を落とすプログラムを提供することで大躍進した某大手パーソナルトレーニングジムがあります。

その店舗で【◯◯店売上ナンバー1トレーナー】いう肩書で、その後退職・独立して成功している人を僕は知りません。あれだけのノウハウを持っているからこそ、大躍進した企業にいたにも関わらず、です。

それは、看板を外したら「売り」がなくなったからに他なりません。そもそも、お客さんを連れてきている人はそのトレーナーではなく、会社ですからそれを売りにする時点でおかしな話ではあるのですが。

バックにある会社のマーケティング力で売上をたてていても、自分の身から伝えられるものがなければ意味がないのです。

利用者が気をつけるべきこと

これは利用者の方も気をつけなければいけないことになります。

なぜなら、安かろう悪かろうという人もよりたくさん現場で働くことになるから。

それはそうですよね、安い報酬で働き、満足いく収入が得られないのであれば自分の技術や知識を磨くための自己投資もできないのですから。

また、自己投資だけでなく、自分自身が満足いく生活をおくることが出来ていないのに、誰かの人生を支えたり元気づけたりすることというのが可能なのでしょうか。

僕はそうは思いません。

 

専門知識は必ず必要です。そして継続的に勉強して行く必要があります。プロなのですから。

また専門知識があれば、良いということもありません。

しかしながら、専門知識もなく、とりあえず会社の研修だけを受けている状態の人が多くなり、しかもその人達は安い対価で働いているために自己投資することもない。その状況でこの業界の価値はあがるでしょうか。

そうは思えません。

 

だからこそ、本当にこの仕事のこと、そしてクライアントのことを考えるのであれば、お金のこととはしっかりと向き合って置く必要があるのです。

僕がお金の話をする理由

トレーナー、セラピスト業界において、お金の話はどこかタブー視されています。

いや、日本全体でも「お金は汚い」という教えがあるので、元々日本という国ではあまりオープンに語られるものでもないなか、更に、これらの業界では積極的にお金の話をすることがありません。

また、健康に関わることだからお金の話をするのは、弱みに付け込むような気がする、という方もいらっしゃいます。

 

しかし、ですね。

個人事業主、つまり経営者として仕事をしているのであれば、お金とはきちんと向き合っていく必要があるのです。

なぜなら、お金は信頼が形を変えたものだから。

お金の歴史

元々は、物々交換で成り立っていた世界です。それはつまり等価交換。

お互いが、同等の価値があると認めた時にその商品の交換が成立していました。

もしここで、同等の価値がない、または「この人は信用ならない」という思いがあれば交渉は成立しません。

時代がすすみ、貨幣が生まれます。

最初は石です。

それから価値のある銀貨や金貨になっていきます。

 

しかしながら、これも後に時間軸が広がり、いわゆるツケ払いのようなものが生まれます。その時に借用書を書いて品物を受け取る。

この時点ですでに等価交換ではないのです。なぜなら、物は渡すけれど支払いは済んでいないわけですから。

受け取ったのは「この日に払う」という約束を記した紙だけです。

 

つまり、信頼があるから取引は成り立っているわけです。

お金と向き合えない事業主が本当に向き合わなければいけないもの

お金と向き合えず、しっかりとした対価を得ていない中で「仕事はお金じゃない」と言っている人は、「仕事は信頼ではない」「信頼はいらない」と言っているのと同じです。

そんな人がどうして、本当の価値を伝えることができるのでしょうか。

お金の話は嫌われる

繰り返しになりますが、こういった業界はお金の話が嫌われます。

僕が、こういった話をし始めたとき、たくさんの批判がありました。

「また金の話をしている」
「金の話ばかりだな」
「金に走った」
「銭ゲバ」

もうね、いいんです。なんと言われようが。

 

だけど、ですね。このブログの人気記事トップ10を見ていただいてもわかるように「お金」のトピックが上位にくるのです。つまりそれだけ、みんな知りたいってことなのです。

それはどこか苦しんでいるからかもしれません。答えが欲しいからなのかもしれません。

ならば、僕が知っていることは提供していって、よりその人達がイキイキと活動していけたら、よりその先のクライアントのみなさんもイキイキとしていけるはずですし、それこそが価値の伝播になります。

 

お金の話をオープンにすることでクライアントが離れる、というリスクもあります。

幸い僕の場合はほとんどありませんが、それが多くなってしまったとしても、それも致し方ありません。自分の本意をきちんと理解していただけなかったと言う自分の力量不足ですから。

 

自分の生活だけを成り立たそうとするのであれば、こんなことわざわざ言いません。自分だけ黙って自分の成功法則にそって仕事していればいいんですから。

でもそれじゃ、意味がないのです。自分だけ良ければいいなんて、わけがない。

自分がしてきた苦労は他の人がする必要ないし、こういった身体や健康に関わるものは、とてもやりがいのある仕事でこれからもっと必要とされていく仕事なのだから

 

だから、僕は今日もお金の話をします。

対価をきちんと頂けるようになる、というのがプロを育てる上で大切なことだと思うから。

専門知識を深めることは必要だけれど、それだけでは相手に伝わらない。

いかに、今あるものをその人にとって必要な形で届けられているか、です。

 

「対価をきちんと頂ける」、「稼げる」、「売れる」

 

言い方は様々ですが、それはすなわちお客様に「選んでもらえている」、「価値を提供できている」、「応援してもらえている」という表れなのだから。

 

【自分軸の人生と仕事の作り方】を伝える【ぽのビジ】、現在は京都で行っていますが、参加者の皆さんからは

「こういった話をきちんとオープンにできることは本当にありがたい」

というお言葉を頂いています。

 

またセラピスト・トレーナーの経営座談会【秘密の夜会】といった機会も設けています。

こちらは過去の開催回について

次回は12月9日17時から19時まで@Kukuna Body(港区三田1-11-22 SSTビル2−B)

参加費5400円(税込み)

終了後懇親会あり(希望者のみ・別途徴収)

お申込はこちら

機会はつくっています。利用して自分のために、後進のために、またクライアントの皆さんのためにこの機会を利用するかどうかはあなた次第です。

僕は、今日も、明日も、明後日も、専門知識と共にお金の話をしていきます。

それが僕の役割だから。


ぽのビジ東京編は2018年早い段階で本編を行おうと思っています。そのため、プレセミナーを12月中に行う予定です。

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それではまた

森部高史


ABOUT ME
森部高史
株式会社Pono Life代表取締役。Kukua Body主宰。アメリカ在住時でATCとしてトップレベルアスリートのケアにあたる。数少ないロルフィング®の資格を持ち、クライアントの身体と心のバランスを整え人生に寄り添い、「先生」と呼ばれる治療家やセラピストを指導する立場にもある。その人柄と結果を導くセッションと講座には全国から参加する人が後を絶たない。現在は自分の知識や経験をオンライン化していく方法を個人事業主や小規模法人経営者に伝えている